2013年1月15日火曜日

Synchronicity / The Police


ポリス5枚目のアルバム。彼らはこのアルバムを発表した後、主にスティングとコープランドの不仲により解散してしまいます。今でこそ再結成などしていますが、彼ら二人の仲は相当険悪な関係だったようでポリス解散後もお互いに口を開けば攻撃し合うほどだったとか。バンドがほぼスティング主導の状態であるというのはコープランドにしてみれば面白くなかったでしょう、そもそもは自分がスティングを説得してこのバンドが結成された訳ですから。

にも関わらず、この作品の完成度は相当な物で、「本当にめちゃくちゃ仲悪かったのか?」と思ってしまうほどハイレベル。俺のイメージだと、バンド内の仲が悪かったら、メンバーがお互いの邪魔をしたり手抜きな演奏をしそうだと思っているのですが、そんな印象を受けることは全く無く、いかなる状況に於いても音楽に対して妥協することのない彼ら3人の姿勢が伝わってきます。多くのファンがポリス最高傑作に挙げる本作では、「とにかく聴け!!」と言わんばかりの存在感をもち、否応なくその世界に引きずりこまれてしまうような楽曲ばかりが並んでいるのです。

アップテンポな1.Synchronicity Iに始まり、6.Synchronicity IIまでのA面(レコードの場合)と、世界的大ヒットとなった名曲7.Every Breath You Takeから11.Murder by Numbers(カセット・CDのみに収録、オリジナル盤は10.Tea in the Saharaがラストトラック)までのB面は、A面はそれまでのポリスのイメージ通り、バンドサウンドを前面に押し出した曲、B面はしっとりしたナンバーの印象が強いです。


やはり有名な曲といえば7.Every Breath You Take(邦題:見つめていたい)で、全くポリスを聞いたことが無い人もこの曲は聞いたことがあるかもしれません。このシングルはビルボードで1位を獲得し、年間チャート1位にもなりました。この曲を聞けば分かる通り、ギター・ベース・ドラムは前に出ている印象が無く、ひたすらに歌を引き立たせ、この曲のイメージを表現することに腐心しているかのようで、ポリスと言うよりはスティングのソロ作品という声が挙がることも。しかしそれを差し引いてもメロディーの美しさ、スティングのボーカル、中盤の盛り上がりなど、ポリスを語る上では外せない素晴らしい曲だと思います。


ただ個人的に一番好きな曲は8.King of Pain。この曲もシングルカットされ、全米3位を記録。イントロ後の儚げなスティングのボーカルがとても美しく、どこか達観したような歌詞と泣けるメロディーがたまらない。コーラスの歌い方も非常に俺の琴線に触れるものでした。特筆すべきはサマーズのギターソロで、ほぼAメロと同じフレーズを弾いているだけと言えばそうなのですが、その音色が素晴らしくこれもまた泣けてしまう。サマーズのギターはテクニック的には難しくないものが多いのですが、楽曲を生かす音作りが圧倒的に上手い気がします。とにかく名曲。


なお「Synchronicity」というタイトルは、心理学者ユングによって提唱されたもので、詳しくは彼の著書(アルバムジャケット中段右でスティングが手にしている本がユングのものらしい)を読んだ方が良いのでしょうが、時間的経済的制約からここではウィキペディアの当該項目を参照することとします。それによると、複数の事象が「偶然」一致した事例を考えると、全てでは無いにせよそれは「偶然」ではなく、何らかの力、働きかけによるものである…といったものだそうです。

デビュー時の「ビートルズを超える」という言葉。ポリスは奇しくもそのビートルズと同様に不仲(原因はそれだけではありませんが)に陥り、そのような緊迫した人間関係にありながらどちらのラストアルバムもバンド史上稀に見る傑作であったという共通点…これこそ「Synchronicity」を体現しているというのは考えすぎでしょうか。

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